作文の能力を伸ばすことは、中学入試に合格すること以外にも多くのメリットが存在します。
皆さんも、作文って何となくメリットはありそうかなくらいには思われているかもしれません。
作文を勉強する事で実際に身につく力とは、主には以前にもお話した以下のような力のことです。
・論理的思考力
・発想力
・表現力
・論述力
・語彙力
一つ言えることは、作文は知能を高めるだけでなく人の内面の力、『人間力』を高めることに大きな効果を発揮するということです。
しかし、これらの力が何故作文を勉強することで身につくのでしょうか。
それは、作文の取り組み過程に理由があります。
作文を書く場合、通常はあるテーマが与えられ、そのテーマについての自分の気持ち、考えを作文にします。
例としては、
『絶滅危惧種の保護』
『地球温暖化』
といった時事問題的なテーマだったり、
『あいさつの効果』
『最も悲しかった経験』
『友達の必要性』
のような日常生活に関連したテーマだったりです。
このテーマに沿って、経験と知識を総動員して、自分が書くべき内容を頭の中で組み立てなければなりません。
この作業が得意な人もいれば不得意な人もいますが、とにかくこの作業は避けて通ることが出来ません。
よく考えてみて下さい。
「絶滅危惧種の保護」や「友達の必要性」というテーマについて、普通に生活している中で真剣に考えることなんて滅多にないですよね。
しかも、その事柄についての自分の見解を表明するなんて事も普通は絶対しないと思います。
それが出来るのが作文の勉強です。
そして、
『自分の見解を表明する』ことは、自ずと『自分の価値観の発見』につながります。
自分の価値観というのは簡単に言うと、”自分がどんなことに価値を見出すか”ということです。
イメージしやすいところでは、「善悪の判断基準」や「優先順位の決め方」などです。
例えば、次のような作文の課題があったとします。
『科学の発達についてあなたが思うことは何ですか』
『話し合いで一番大切なことは何だと思いますか』
少しだけ真剣に考えてみてください。
あなたは、科学が発達することについては好意的な方ですか、それとも懐疑的な方ですか。
あなたは、話合いで一番大切なのは自分の意見をきちんと伝えることですか、それとも相手の意見をきちんと聞くことですか。
ここで選んだ答えがあなたの価値観の一部です。
こういう自分の価値観は、いざ聞かれてみないと自分でもなかなかよく分からないものです。
作文の題材を通して、自分という人間がどういった感じ方や思想を持っているのかが少しずつ明らかになります。
つまり、自分の価値観を客観的に認識できるということです。
自分の価値観をあらかじめ認識できていることは、受験の作文課題の際には非常に役立ちます。
なぜなら作文課題でどんなテーマを投げかけられたとしても、自分の価値感に照らし合わせることで、『中身のある文章』、『説得力のある文章』をいつでも作ることができるようになるからです。
ぜひ皆さんも、作文を通して自分の価値観探しを続け、自分の中に価値観を主成分とする『一本の柱』を育ててください。
この柱を育てれば育てるほど人間力は向上し、作文も上達します。
では、具体的にどうすればいいでしょう?
スポーツと同じです。
「体力」と「技術」を強化すればいいのです。
「体力」つまり書く力は、とにかく書くことで身に付きます。
単純なことではありますが、書く場数を増やしていかないといけません。
ただ中学受験生であれば、1~2週間に1作文(500~600字程度)のペースで十分です。
また”言葉のシャワー”も浴びましょう。
本やテレビ、インターネットなどを通してなるべく多くの言葉に触れ、その意味を意識的に理解するようにしてみましょう。
家族で討論なんてできれば最高です。
そうすることで、作文作成に必要不可欠な『語彙力』と『知見』がアップします。
そして「技術」
これは、作文に彩(いろどり)を与えてくれます。
例えば、”段落のつくり方”や”正しい文体”といった基本的な技術を身に付けることだけで、読者にとって格段に読みやすく、内容に没頭できる文章が書けるようになります。
更には、”書き出し文章の書き方”、”締めくくり文章の書き方”、”比喩の有効な使い方”など、もう少し高度な技術を身に付けられれば、個性的で印象的な文章、つまり「光る文章」を書くこともできるようになります。
これらの力を身に付けた時、それは生涯にわたる『武器』を身に付けたことと同じです。
様々な場面で自分を助けてくれます。
高校入試や大学入試だけでなく、就職活動、論文、企画書、提案書、報告書など、社会に出てからも日々求められる要求に対して、確実に役立つ力となります。
最後に、
目に見えない作文の効果もお伝えしたいと思います。
作文はそもそも、自分の思いや感情を相手に伝えるツールです。
このツールを使って、ぜひ”伝える楽しさ”や”伝わる喜び”を感じてください。
この”楽しさ”や”喜び”を感じられるのは、他の教科にはない作文独自のメリットだと思うのです。
「伝える楽しさ」「伝わる喜び」を知ることは、取りも直さず、「学ぶ楽しさ」「生きる喜び」を知ることにほかなりません。